土地活用で大事な『用途地域』とは?マンション建築に適した地域についても解説!
2023.12.27 UP
「せっかく土地を持っているのだから、何か活用できないか」
遊休地を保有している場合や土地を相続した場合、このように思う方も多いのではないでしょうか。
土地活用を考える上で把握しておきたい事柄のひとつは「用途地域」です。
日本では建物を自由に建築できる訳ではありません。
好き勝手に家を建てると、住宅のすぐ横に工場ができたり、低層のアパートの目の前に大きなマンションができたりと、住人など建物を利用する人にとって快適な環境を損なう建築が行われる可能性があるからです。
住宅・商業地・工場や自然など、様々な環境が調和した地域を作るために、目的ごとに建築できる建物をエリアごとに定める決まりが「用途地域」です。
どのようにエリア分けが行われて、どういった制限がかかるのか確認しましょう。
土地活用の代表的な方法であるマンションを建てるのに適した用途地域も紹介しますので、特にマンションを土地活用の選択肢に入れている方はぜひ参考にしてください。
>>関連コラム:土地活用の種類のおすすめは?人気の「駐車場経営」と「マンション経営」のメリットを解説
Contents
そもそも用途地域とは?
そもそも用途地域とは、どのような決まりなのでしょうか。
用途地域は「住居系・商業系・工業系」に分けられる
用途地域は住居系・商業系・工業系の3つに分類されます。
それぞれ、設定される目的は以下のとおりです。
- 住居系:人が居住するのに適した環境が整えられたエリア
- 商業系:商店やショッピングセンターなど、買い物施設の建築に適したエリア
- 工業系:工業の利便性を高めることを目的にしたエリア
こうして大まかに3種類のエリアに分類することで、それぞれのエリアごとに定められた目的を達成することが容易になります。
「住居系・商業系・工業系」は13種類に分けられる
3種類に分類された用途地域は、さらに13種類に分類されます。
住居系地域を例にすると、一戸建ての建築に適したエリアもあれば、アパートやマンションの建築に適したエリアもあります。
こうした建物が混在して住環境が悪化することを防いでいるのです。
具体的な13種類の用途地域は以下の表のとおりです。
(1)第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域。 小規模なお店や事務所をかねた兼用住宅や、小中学校などが建てられます。 |
(2)第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅のための地域。 小中学校などのほか、150㎡までの一定のお店などが建てられます。 |
(3)田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域。 住宅に加え、農産物の直売所などが建てられます。 |
(4)第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域。 病院、大学、500㎡までの一定のお店などが建てられます。 |
(5)第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅のための地域。 病院、大学などのほか、1,500㎡までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。 |
(6)第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域。 3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどを建てられます。 |
(7)第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域。 店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどを建てられます。 |
(8)準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための施設。 |
(9)近隣商業地域 | まわりの住民が日用品の買い物などをするための地域。 住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。 |
(10)商業地域 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。 住宅や小規模の工場も建てられます。 |
(11)準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設が立地する地域。 危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。 |
(12)工業地域 | どんな工場でも建てられる地域。 住宅やお店も建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
(13)工業専用地域 | 工場のための地域。 どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
なお、土地活用で共同住宅であるマンションを予定している方が建築できるエリアは、工業専用地域を除いた12のエリアです。
用途地域ごとにどんなマンションが建てられる?
では、12の地域の中で具体的に、収益性を高めるためにはどの地域がマンションの建築に適しているのでしょうか。
先に結論を述べると、以下の7つの地域がマンションの建築に最適なエリアといえます。
- ・ 第一種中高層住居専用地域
- ・ 第二種中高層住居専用地域
- ・ 第一種住居地域
- ・ 第二種住居地域
- ・ 準住居地域
- ・ 近隣商業地域
- ・ 商業地域
どうしてこれらの地域がマンションの建築に適しているのか、具体的な理由を確認してみましょう。
※準工業地域については後述
はじめに、土地活用を行う場合にマンションの建築に適していない、またはマンションを建てられないエリアを紹介します。
「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」は、マンションの建築自体は可能ですが、建物の最高高さが10m(地域によっては12m)に制限されていることから、低層マンションの建築に限られ、収益が低くなる可能性がある点に注意が必要です。
「工業専用地域」は、工場に関連する施設しか建築することができず、そもそもマンションなどの住宅を建築することはできません。
続いて、マンションの建築に適したエリアとしては「第一種中高層住居専用地域」「第二種中高層住居専用地域」が挙げられます。
低層住居専用地域と異なり高さ制限が撤廃されて、高層で床面積が大きなマンションを建築できる点がおすすめできる理由です。
「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」も大規模なマンションを建築可能です。
第一種・第二種中高層住居専用地域との違いは、床面積の制限はあるもののショッピングセンターの建築やカラオケ店・パチンコ店といった建物の建築が可能になることです。
利便性の高いエリアにマンションを建築したいと考えている方におすすめの地域です。
「近隣商業地域」「商業地域」も住居地域・準住居地域と似た特徴を持つエリアです。
こちらは10,000㎡を超える大規模なショッピングセンターや映画館、ナイトクラブといった建物も建築可能になります。
最後に「準工業地域」「工業地域」も”工業”と名称がついていますが、マンションの建築は可能です。
ただし、工場を建築可能であることから、現在建築済みの工場の種類によっては騒音など、詳細な現地調査が必要になるエリアです。
準工業地域については最近は、工場が移転したり、住宅に建て替わったりと指定された用途地域と実際の町の姿が異なってきているところも多くなってきておりでマンション(共同住宅)の建設に適するような地域もあります。
マンション建築に関わる用途地域制限
具体的に、用途地域が定められたエリアでは、どのような規制を受けるのでしょうか。
主だったものは①「建ぺい率・容積率」②「建物の高さと形状」③「道路の接道義務」です。
①「建ぺい率・容積率」
引用:「建ぺい率・容積率・用途地域」で、建物のボリュームをチェック
A:建ぺい率と容積率の組み合わせで、土地にたてられる最大の建物がイメージできます。例えば建ぺい率50%で容積率100%の場合は土地面積の半分を占める2階建ての建物【50%×2=100%】となります。
B:建ぺい率が80%で容積率が400%では、各階の面積が土地の80%を占めるような建物の場合、5階建てにすれば【80%×5=400%】となります。
なお、建ぺい率には一定の条件下で緩和される規定があり、該当する場合は通常よりも大きな規模の建物を建てられることになります。
以下の事例に加えて、準防火地域に耐火建築物もしくは準耐火建築物、防火地域に耐火建築物を建築する場合なども10%の緩和規制を受けて建物を建築することが可能です。
特定行政庁が指定する角地 … (1) | 都市計画で定める建ぺい率 +10% |
防火地域内で耐火建築物等 … (2) | 都市計画で定める建ぺい率 +10% |
準防火地域内で耐火建築物等または準耐火建築物等 … (3) | 都市計画で定める建ぺい率 +10% |
(1)(2)を同時に満たす場合 (1)(3)を同時に満たす場合 | 都市計画で定める建ぺい率 +20% |
さらに建物の高さと形状は、絶対高さ制限や道路斜線制限、北側斜線制限といった制限です。
これらの制限は都市計画で定められた、または算出された高さを結んだ線より高い建物を建てられなくなる決まりです。
道路の接道義務とは、建築基準法第43条1項に定められた、都市計画区域・準都市計画区域内に建物を建てる際に、道路に2m以上接していなかればならないという義務を指しています。
この道路とは幅員4m以上の道の事で、日常の交通や火災の際の避難経路確保の観点から敷地は道路に接する事という義務が付されています。そのため、道路から奥側部分の土地の一部の敷地を延長させ、細長い形状2mだけ道路に接するようにするケースもあり、こうした形状の土地を旗竿地と呼びます。
また、建築基準法が施工される以前の道路の場合は特定行政庁が認めたものであれば接道義務を果たしているとみなされ、幅員4m未満でも中心線から2m後退した位置を境界線として建物を建てることができます。
接道義務は、災害時の避難路確保や緊急車両の通行を可能にすることから求められています。
用途地域ごとにこうした制限が定められていて、建物の用途や大きさを規定することができるのです。
用途地域の調べ方
記事の終わりに、用途地域を調べる方法をお伝えします。
実際に用途地域を調べて、建築予定の土地にどの程度の高さ・規模の建物を建てられるのか確認してみましょう。
用途地域を調べる最も確実な方法は、市区町村といった自治体の担当課に聞くことです。
担当課では該当する土地がどのエリアに属するのか、最新の情報を正確に掴めます。
ただし、自治体の担当課に赴く手間がかかり、複数の窓口で確認を要する場合は時間を要するでしょう。
そこでおすすめできるのは、自治体のホームページを確認することです。
多くの自治体では用途地域を定めたマップを公開しており、パソコンでもスマートフォンでも気軽にアクセスできます。
利便性の高いホームページは気軽に調べられる一方で、都市計画図の見方が分からなかったり、具体的に何階建てのマンションを建築できるのか、といった事項までは分かりません。
そこで最もおすすめできるのは、不動産会社やデベロッパーに聞くことです。
こうした専門家は都市計画図の入手方法や見方に精通していることに加えて、何階建ての建物が建てられるか、どの程度の収益を見込めるのかといった見通しまで建てられます。
>>関連コラム:「ビル・マンションの建設費」はおいくら?『諸費用』の内訳について詳しく解説
現在置かれている状況に合わせて、最も適した方法で用途地域を調べてみましょう。
まとめ
土地活用を行うに当たって必ず知っておきたい用途地域について、そもそも用途地域とはどのような決まりなのか、どこで調べられるのか、そしてマンションを建築するならどこで建てるべきかといった事柄を解説しました。
用途地域によって、建てられる建物の高さや規模は異なります。
土地の購入や建物の建築前にしっかり把握しておくことで、最も費用対効果の高い土地活用を行えるでしょう。
ここで大切になるのは、土地活用を具体的に相談できるパートナーの存在です。
これは決して大きな会社という事でなく計画地周辺について詳しく適切なアドバイスができると考えます。
土地活用のパートナーをお探しの方は、80年以上土地活用に携わってきた鈴与三和建物株式会社までお気軽にご相談ください。用途地域から収益の見通しまで、気になる点を解消して土地活用を成功に導きます。