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土地活用の選択肢として サービス付き高齢者住宅のメリット・デメリットや収益性の特徴とは?

2023.10.27 UP

土地の活用を考えるなかで、収益物件の建築を検討する場合、一般的には賃貸マンションやオフィスビルといった選択肢が考えられます。

このうち賃貸マンションから派生する選択肢の一つとして「サービス付き高齢者住宅」が挙げられます。

サービス付き高齢者住宅とは、高齢者が安心して生活できるよう、個々人のプライバシーを守りながら、安否確認や生活相談などのサービスの提供を行う高齢者向けの住居の形態です。

今回は土地活用の方法として、サービス付き高齢者住宅にどのようなメリットやデメリットがあるのか、またその特徴がどんなものなのかをまとめてみました。

サービス付き高齢者住宅とは

はじめに、サービス付き高齢者住宅とはどのような住まいなのか確認しましょう。

厚生労働省によると、サービス付き高齢者住宅は「高齢者単身・夫婦世帯が居住できる賃貸等の住まい」と定義されています。

そのうえで、高齢者に配慮した設備や規模、入居者の安否確認や生活相談といったサービスの提供が義務付けられているのが特徴です。

施設によってはオプションで食事の提供やリハビリ、夜間の見守りといったサービスを提供するケースもあります。

>厚生労働省:サービス付き高齢者向け住宅について

高齢者住宅の需要と今後の見通し

土地活用の選択肢としてサービス付き高齢者住宅を検討するうえで、重要なものの一つが今後の需要です。「2025年問題」など、高齢化社会の進行が大きく取り上げられている通り、高齢者の増加は今後も続くと予測されています。それに付随して高齢者住宅も今後数十年単位で需要の増加が見込まれます。

>総務省:高齢者の人口について

総務省の調査によると、高齢者の数はこれから2040年まで一貫して増加する傾向が示されています。

>日本創成会議:東京圏高齢化危機回避戦略 図表集

さらに、首都圏を対象とした調査によると、2015年までは首都圏で後期高齢者向けの施設が足りている一方で、2025年以降は首都圏の全ての自治体で後期高齢者向けの施設が不足することが予測されています。

こうした社会情勢の下で、サービス付き高齢者住宅に対する需要は伸び続けると予想されており、建築することで長期に渡って安定した経営が期待できます。

提供するサービスの種類

サービス付き高齢者住宅を運営する場合、安否確認や生活相談といった基本的なサービスを提供することはもちろん、周辺のニーズや競合を調査し、オプションのサービスを提供するかどうかを検討することも重要です。

オプションとして提供されるサービスは、以下のようなものが挙げられます。

  • ・生活支援
  • ・食事の提供
  • ・身体介護
  • ・リハビリ、医療行為
  • ・レクリエーション

こうしたサービスを適切に提供することで、周辺の高齢者住宅との差別化や、利用者の満足度を向上させることができます。

満足度の向上は、空室リスクの低下や収益率の向上にもつながり、安定した施設運営が可能になることから運営者側にとっても大きなメリットがあります。

サービス付き高齢者施設の「運営方法」

土地活用の方法としてサービス付き高齢者住宅を選択する場合、提供するサービスの種類とともに重要になるのは運営方法です。

土地の所有者が直接運営する「直接運営」と、外部の専門家に委託する「外部委託」
どちらの方法を選択するかで収益の程度や施設を運営する手間が変わるので、慎重に選択する必要があります。

直接運営

施設を運営する1つ目の方法は、所有者自身が施設を運営する「直接運営」です。

施設の所有者自身が、介護福祉士や社会福祉士など運営に必要な有資格者を含む職員を雇い、安否確認や生活相談といった基本的なサービスやオプションとして食事の提供、リハビリといったその他のサービスを提供します。

職員が提供するのは基本サービスのみで、その他オプションサービスを専門業者に委託するケースもあります。

外部委託

施設を運営する2つ目の方法は、外部の介護事業者に運営を委託する「外部委託」です。

建物の管理から、安否確認や生活相談といった基本サービス、その他オプションサービスまですべて運営業務を専門業者に委託する形式で、施設所有者の手間や人員確保等の負担を少なくできる点がメリットです。

収益の考え方

直接運営と外部委託とでは、収益に対する考え方が大きく異なります。

それぞれの運営方法で収益モデルがどのように変わるのか、確認してみましょう。

直接運営型

施設所有者が直接施設を運営する場合、収入と支出は以下の形となります。

  • ・収入:住居賃料(近隣マンションと同等の水準)+運営報酬(提供するサービスに応じて)
  • ・支出:施設運営費(主に職員の人件費)+オプションサービスの委託費(外部業者を利用する場合)

入居者から運営報酬が得られるため、運営上の利益が確保できれば外部委託型よりも手元に残る金額が大きくなる点が特徴です。

外部委託型

一方で、運営を外部に完全に委託する場合は以下のとおりです。

  • ・収入:住居賃料(近隣マンションと同等の水準)
  • ・支出:なし

施設の運営を外部に委託する場合、入居者から得られる運営報酬は委託先の業者が得るため、所有者は住居部分の賃料のみを受け取ることになります。

施設運営の手間は少なくなりますが、施設運営による利益が得られなくなる点が特徴です。

サービス付き高齢者施設運営の「メリット・デメリット

ここまででサービス付き高齢者住宅の特徴や運営方法、収益の考え方などを解説してきました。最後に土地活用の選択肢のひとつとして検討する場合のメリット・デメリットをまとめてみました。

メリット

サービス付き高齢者住宅のメリットは、以下の4つです。

  • ・補助金の対象事業となる可能性がある
  • ・周辺マンションとの差別化が図れる
  • ・賃貸マンションより収益率が高くなる可能性がある
  • ・通常の賃貸マンションへ転用可能

補助金の対象事業となる可能性がある

サービス付き高齢者住宅は、国や自治体が実施する補助金や税金の軽減制度の対象となる場合があります。

たとえば国土交通省はサービス付き高齢者住宅を建築した場合に10分の1を補助する事業を行っており、東京都では本事業を受ける場合に補助金を加算する制度を実施しています。

こうした制度を利用することで、初期投資を抑えて土地の活用が可能です。

>国土交通省:令和5年度 サービス付き高齢者向け住宅整備事業の募集開始

>東京都:東京都サービス付き高齢者向け住宅整備事業

周辺マンションとの差別化が図れる

賃貸マンションが数多く建設される中で、他のマンションとの差別化は大きな課題です。周辺の需要を調査し、サービス付き高齢者向け住宅が向いている地域であれば、周辺の賃貸マンションとの差別化として機能し、空室・値下がりリスクの低減が期待できます。

賃貸マンションより収益率が高くなる可能性がある

一般的な賃貸マンションの収入は、入居者から得られる部屋の賃料に限られます。

一方でサービス付き高齢者住宅を所有者が直接運営する場合であれば、安否確認や生活相談など提供する高齢者向けのサービスに応じた運営報酬が得られます。

職員の人件費など、一般的な賃貸マンションでは必要がない支出も発生しますが、賃料収入に加え、施設運営からも利益が得られれば収益性が高められる可能性があります。

通常の賃貸マンションへ転用可能

高齢者向けの住宅の需要が低下した場合、通常の賃貸マンションに転用できる点もメリットに挙げられます。

老人ホームなどとは異なり、地域や時代の変化に伴い需要が減った場合や、人員の確保が困難になった場合など、万が一サービス付き高齢者住宅の運営が難しくなった際に賃貸マンションへ転用できるフットワークの軽さは魅力的です。

ただし、補助金を利用して建築した場合は「10年は高齢者向けの住宅として利用すること」といった制限を受ける場合もあるので注意が必要です。

デメリット

一方で、デメリットを感じるケースもあるので、以下の2つの点に留意しておきましょう。

  • ・直接運営の場合、人材確保や運営ノウハウの有無などハードルが高い
  • ・外部委託の場合、収益性が賃貸マンションに劣る場合がある

直接運営の場合、運営のハードルが高い

土地や建物の所有者が直接サービス付き高齢者住宅を運営する場合、人材の確保や経理業務などの運営ハードルの高さに悩む可能性があります。

有資格者の確保や施設規模に応じた職員の確保など、施設所有者の直接運営には大きな課題があります。

自身で運営する場合でも、経営初期はマンションや高齢者向けサービスについての助言を専門家から受けられる態勢を作っておきましょう。

外部委託の場合、収益性が賃貸マンションに劣る場合も

サービス付き高齢者住宅は職員の事務所や入居者の談話スペースなどが必要となり、一般的な賃貸マンションに比べ共用部が大きくなります。それに伴い、賃料収入に直結する住戸の面積が少なくなってしまう為、賃貸マンションとしての収益率は下がる可能性があります。

まとめ

土地活用の選択肢として、サービス付き高齢者住宅の特徴やメリット・デメリットを紹介しました。

これから高齢化が進行し、高齢者の人口が増加の一途をたどることが確実視される日本において、サービス付き高齢者住宅は検討すべき選択肢のひとつです。

運営方法や立地など、実際にサービス付き高齢者住宅を建てる際には様々なハードルがありますが、こうした課題を乗り越えれば、安定した経営や、収益性のUPが期待できます。

今回はサービス付き高齢者住宅について解説しましたが、土地活用の方法にはそれ以外にも様々な選択肢があります。

広さや形など土地の持つ特性や周囲の環境、所有者の方針や周辺の需要など、条件によって最適な活用方法は変わります。ご所有の土地でどんな活用が可能なのかなど、検討の一歩目の調査は非常に大切です。

私たち鈴与三和建物株式会社は80年以上、土地活用に携わってきた経験を活かしてお客様に最適な土地活用の方法を提案します。土地に関するお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

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