土地活用の補助金・助成金『ZEH-M(マンション)』申請手順や概要、メリット・デメリットを解説
2024.11.18 UP
近年、地球温暖化の進行を抑えることを目的に、CO2の排出を減らすことが世界的な課題となっています。その中でカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を合わせ、排出量を実質0にするという考え方)への関心が高まっています。
これを踏まえ不動産・建築分野においては、ZEH(ゼッチ)やZEB(ゼブ)の普及に向けた取り組みが加速しており、補助金の交付なども行われています。
本記事ではZEHとは何かも含め、マンション建築に関連するZEHの補助金、メリットやデメリットなどを解説します。
Contents
ZEHとは
ZEH(ゼッチ)とは「net Zero Energy House」の略語で、生活で消費するエネルギーを生産するエネルギーが上回る家を意味します。
具体的には、断熱性の向上・設備の効率化、電力創出などにより、エネルギーの消費量を削減し、それを上回る量を生産することで、消費するエネルギーを実質0以下にする家です。
引用:資源エネルギー庁 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
ZEHの3要素
断熱性の向上 | 高性能な断熱材の利用や構造の採用など |
設備の効率化 | 省エネエアコンやLED照明、高効率な給湯システムなど |
電力創出 | 太陽光発電システムの導入など |
ZEH-Mについて
ZEH-Mの概要
ZEH-Mとはここまででご紹介したZEHの集合住宅(マンション)版のことを指します。
住棟単位(建物全体)か住戸単位(部屋)で決められた基準を達成している建物がZEH-Mと認定されます。基準は大きく分けて以下の3つです。
- ・全ての住戸が強化外皮基準・外皮平均熱貫流率の基準を満たす
- ・基準となるエネルギー消費量から20%以上の消費量削減する
- ・創出するエネルギー分のマイナスも含め、基準となるエネルギー消費量から100%以上の消費量を削減する
これらの基準を全て満たす建物がZEH-Mと認定されます。
しかし集合住宅の場合、上記基準を満たすハードルが高いため、より緩い基準も設けられています。それらを満たすことで「Nearly ZEH-M」「ZEH-M Ready」「ZEH-M Oriented」などといったZEH-Mの下位認定を受けることができます。
基準の厳しさはZEH-M > Nearly ZEH-M > ZEH-M Ready > ZEH-M Oriented となっています。
ZEH-Mの補助金
ZEH-MおよびNearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedと認定された建物の建築は補助金の対象となります。
以下の表のように、補助金額は建築する建物の住居部分の階数と上記認定の種類によって異なります。
補助金の種類 | 認定の要件 | 補助金額 |
高層ZEH-M支援事業 (住宅用途部分が6層~20層) | ZEH-M Nearly ZEH-M ZEH-M Ready ZEH-M Oriented | ・補助対象経費の1/3以内 ・上限:3億円/年 ・8億円/事業 ・50万円/戸 |
中層ZEH-M支援事業 (住宅用途部分が4層~5層) | ZEH-M Nearly ZEH-M ZEH-M Ready | ・補助対象経費の1/3以内 ・上限:3億円/年 ・8億円/事業 ・50万円/戸 |
低層ZEH-M支援事業 (住宅用途部分が3層以下) | ZEH-M Nearly ZEH-M | ・40万円/戸 ・上限:3億円/年 ・6億円/事業 |
住宅用途部分の階数が少なくなるほど、より厳しい基準を満たさなければなりません。
ZEH-M 建築~補助金の給付までの流れ
ZEH-Mの建築~補助金の給付は以下の図のように進んでいきます。
参考:環境共創イニシアチブ 令和6年度中層ZEH-M支援事業
補助金の給付に絡み、申請や審査、検査など、一般的なマンションの建築よりも手続きや作業が多くなる為注意が必要です。
工期などに悪影響が無いよう、事前準備や余裕のあるスケジューリングをすることが大切です。
ZEH-Mを建築する「メリット」
ZEH-Mの建築には補助金以外にも以下のようなメリットがあります。
- ① 賃貸する場合に周辺の他物件との差別化ができる
- ② 脱炭素への取り組みをしていることをアピールできる
- ③ 災害対策になる
① 賃貸する場合に周辺の他物件との差別化ができる
ZEH-Mの賃貸を行う場合、高い断熱性や遮音性、高効率な設備の導入により、入居者は光熱費を抑えることができます。
建物の所有者にとって直接的なメリットではありませんが、周辺物件と差別化することで空室リスクや賃料下落リスクを抑えることが期待できます。
② 脱炭素への取り組みをしていることをアピールできる
特に企業にとって、ZEH-Mの建築は自社が脱炭素などの環境問題に積極的に取り組んでいる事をアピールすることができ、企業ブランディングにとってのメリットと言えます。
③ 災害対策になる
太陽光発電設備や蓄電池の設置などは、エネルギーの創出だけでなく、災害など緊急時の電源としても活用が可能です。
昨今、災害対策意識は高まってきており、このような意味でも周辺物件との差別化ができます。
ZEH-Mを建築する「デメリット」
ZEH-Mの建築にはメリットがある一方で以下のようなデメリットもあります。
- ① 建築費が割高になってしまう
- ② 外観や間取りに制限を受ける可能性がある
- ③ 太陽光発電の定期メンテナンスが必要
① 建築費が割高になってしまう
ZEH-Mの建築は、断熱性の高い部材や設備などの使用や太陽光発電設備の設置が必要となるため、一般的なマンションと比べ建築費用が割高になってしまいます。
規模や仕様にもよりますが、数百万~数千万単位で違いが生じます。計画する際は補助金額の確認も含めしっかりとした検討をおすすめします。
② 外観や間取りに制限を受ける可能性がある
断熱性の高い部材や設備などの使用や太陽光発電設備の設置は建築プランにも影響を及ぼす可能性があります。
③ 太陽光発電の定期メンテナンスが必要
太陽光発電の設備は設置時の費用だけでなく、維持にも費用がかかるため注意が必要です。メーカーによっては10~15年の保証期間を設けていることもあるようですが、マンションの寿命と比べると短く、メンテナンスや設備の更新などに費用がかかることを想定して計画することが大切です。
まとめ
今回はZEH-Mについてご紹介しました。
カーボンニュートラルの2050年達成など、環境についての目標達成を目指す政府の方針から、今後ZEHは浸透・利用の促進が加速すると考えられます。
しかし現状ではZEHのメリットより、コスト高などのデメリットの存在感が大きく、導入の障壁となっているようです。
現状、ZEH-Mの仕様にしても直接的な賃料アップには結びつかず、コスト高の解決策とはなっていません。ただし、今後の普及とともにZEHのメリット(居住性・光熱費削減・災害対策)が認知されれば、入居者にとっての付加価値となり、賃料アップにつながる可能性はあります。
ご紹介した通り、ZEH-Mにはメリットとデメリットがあります。マンションの建築をご計画の際にZEH-Mを選択肢の一つとして検討をする場合は、それらを踏まえて検討することをお勧めいたします。