東京のマンション建築に関する法律・条例【土地活用で知っておきたい基礎知識】
2024.12.25 UP
土地活用の選択肢として、賃貸マンションなど収益物件の建築する場合、自由にどんな建物でも建てられるというわけでは無く、建築に関する法律や条令など様々なルールや規制をクリアしなければなりません。
企画~設計、施工まで行う私たちのような会社のとって、法律や条令を守りながらお客様のご要望を叶えられるプランニングを行うことが最も重要な仕事の一つです。
そこで本記事では、東京都においてマンション(共同住宅)の建築を検討する際に守らなければならない以下の法律や条令について、その概要をご紹介します。
- ・建築基準法
- ・東京都の建築安全条例
- ・東京都駐車場の附置義務
- ・消防法
- ・各区が独自に定める条例
Contents
建築基準法
建築基準法とは、国民の生命や健康、財産の保護を目的に、建築物の敷地・構造・設備・用途などに関する最低限の基準を定めた法律です。
1950年の制定以来、震災の発生や建築に関する事件・不祥事などをきっかけに改正が行われており、内容は変化しておりますが、主に以下のような規制が設けられています。
- ・敷地に関する規制
- ・構造に関する規制
- ・防火に関する規制
- ・接道規制
- ・用途規制
- ・形態規制
敷地に関する規制
敷地に関する規制は、建築物がある敷地の地盤強度の確保や適切な排水を行うという観点から設けられている規制です。
具体的には「建築物の敷地を道路よりも高くしなければならない」、「雨水や汚水の処理施設を設けなければならない」、「斜面などがけ崩れ等の危険性がある場合は擁壁を設置しなければならない」など、敷地に関する規制が定められています。
構造に関する規制
構造に関する規制は、建物の自重や積載荷重、水圧、風圧、土圧、自身による振動など様々な外力に対して安全性を確保するために設けられている基準です。
基準は建物の高さや大きさ、用途などによって異なりますが、建物の主要構造部(壁、床、柱、梁、屋根、階段、基礎)などについて使用すべき材料の基準や構造、配置など様々なことが規定されています。
>>関連コラム:耐震化の助成金を利用したマンションやビルの「建替」「改修」について
防火に関する規制
防火に関する規制は、火災の発生や延焼を防ぐ、円滑な避難経路を確保するなどを目的に、建物の規模や構造に応じて満たすべき基準が設けられています。
屋根や外壁の防火性能や耐火性、避難や消火活動を円滑に行うための経路を確保する為のルールなどが含まれます。
接道規制
接道規制は、緊急車両の通行や災害時の避難経路、住民の生活環境の保全などを目的として定められている規制です。建築物は原則として幅員4m以上の道路に2m以上接することが求められます。
用途規制
用途規制とは、市街地の環境を保全するための規制です。都市計画法で定められた13の用途地域(商業地域や工場地域、住居地域など)に応じ、それぞれの地域で建築が可能な建物の用途や規模などを定めています。
>>関連コラム:土地活用で大事な『用途地域』とは?マンション建築に適した地域についても解説!
形態規制
形態規制とは、防災や住環境の保全を目的として、容積率や建ぺい率、建物の高さ制限などによって建物の大きさや形を制限し、無計画な開発が行われないようにするための規制です。
>>関連コラム:土地活用|その土地に建てられる大きさは?『建ぺい率』と『容積率』について解説します。
東京都の建築安全条例
国が定める建築基準法と同様に、各自治体でも、その地域の特徴などから独自の建築に関する条例を定めていることが多くあります。
東京都の場合は建築安全条例がそれにあたります。
建築基準法と同様に、生命や財産を守ることが目的ですが、以下のように都独自の規制もあります。
- ①敷地の角切り
- ②路地状敷地での建築制限
- ③接道間口による建物の規模への制限
①敷地の角切り
道路幅員が6m未満の道路が交わる角地については、角部分の一定範囲を道路上に整備する必要があります。
これにより車が曲がりやすく、また見通しが効きやすくなります。
②路地状敷地の制限
建築物の敷地の接道部分が、上の図のような路地状になっている場合、路地の幅や長さの基準を満たす必要があります。
幅や長さの基準は、建築する建物の大きさや高さ、用途などによって異なります。
③接道間口による建物の規模への制限
上記の図のように、マンションなどの特殊建築物を建築する場合、特殊建築物に該当する用途部分の合計床面積に応じて、定められた長さ以上道路に接していなければなりません。
その他の土地活用に関連する法令
建築基準法や東京都の安全条例以外にも、以下のようなマンションの建築計画に影響する法令あります。
- ・東京都駐車場の付置義務
- ・消防法
- ・各区が定める条例
東京都駐車場の附置義務
都内の駐車場整備地区などにマンションを建築する場合、「東京都駐車場条例」及び「東京都集合住宅駐車施設附置要綱」に基づく駐車場の付置義務に配慮しなければなりません。
台数の計算は以下の基準に基づいて行います。その際に、延べ面積が6000㎡以下の建物については、緩和係数を乗じることができます。
【 例 駐車場整備地区に床面積3,000㎡のマンションを建築する場合】
【計算条件】
・床面積3,000㎡のマンション(共同住宅=非特定用途)を建築
・23区内の駐車場整備地区
・緩和係数 式1の計算結果 1/2
駐車場整備地区・23区内で共同住宅の場合、基準床面積350㎡ごとに1台の駐車施設が必要。
3,000㎡/350㎡=8.57×1/2=4.285
繰り上げて、必要な駐車施設は「5台」となる。
これに加え、区の条例などで障害者用の駐車場(車イスでの乗り降りができるような大きい駐車スペース)を設置しなければならない場合が多くあります。
また事務所や店舗などの特定用途に該当する建築物の場合、荷さばき駐車施設の附置義務基準もあります。
消防法
消防法は、対象となる建物を火災から守るための法律です。
火災の予防・警戒・鎮圧や、災害時に傷病者が適切に搬送されることなどを目的に制定されています。
マンションを計画する際は、消化・警報設備や避難設備の設置などに影響します。
各区が定める条例(ワンルーム条例など)
東京都内の多くの自治体が、マンションの建築に関する独自の条例を定めています。それぞれ違いはありますが、建築する建物の規模や住戸数が要件となっており、該当する場合、以下のようなことを守らければなりません。
- ・住戸の最低面積
- ・一定数のファミリー向け住戸の設置
- ・一定台数の駐輪場の設置
- ・障がい者用駐車場の設置
- ・管理人の配置 etc
これらの計算方法や基準は自治体によって異なるため、計画の際はしっかりと確認することをお勧めします。
>>関連コラム:土地活用の収益が高いのは「ワンルームマンション」?ワンルーム条例やライフスタイル変化により
まとめ
>>施工事例:気兼ねなく、ピアノを弾ける賃貸マンション(新宿区)
今回はマンション(共同住宅)の建築に関係する法律や条例について解説しました。
ご紹介した法律や条例は、その多くが建物やその利用者、周辺環境などを保全するための決まり事です。こられの法令を遵守しながらお客様のご要望をできる限り計画に反映し、土地が持つポテンシャルを最大限に活用することが私たち建築会社の最も重要な業務です。
私たち鈴与三和建物株式会社は東京都内で90年以上、マンションやビルなどの設計~施工を行ってきました。これまでの経験の中で建築に関する法令などを熟知しており、培ってきたノウハウと合わせ、お客様に最適な土地活用のご提案をいたします。
ご計画がある方、これから検討を始める方は是非お気軽にご相談ください。